妊娠中のエピジェネティックな老化
「エピジェネティック」は「ジェネティック(genetic)」にepi(ギリシャ語で「上」)を付けた造語で、遺伝的な元々の性質が「上書き」される(DNAの塩基配列は変わらないけれど、メチル化などで修飾されると遺伝子の発現が変化してしまう)状態なので、「後天的な」という意味も含みます。例えば、一卵性双胎は生まれた時はよく似ていますが、育つ環境が違うと片方は老けて見えるのに、もう片方は若々しく見えることがあります。過酷な環境が老化と関係があることは分かっていましたが、変化することがないと思われていた遺伝子の発現は、ストレスなどで変化が起こることが解明されました。このような遺伝子の制御に関係する研究分野のことを「エピジェネティクス」と言います。
2013年にエピジェネティックな変化から暦上の年齢ではなく、生物学的年齢を算出できることが提唱され、現在では膨大なデータの蓄積をもとに、どのくらい赤ちゃんの時から変化しているのか(老化の程度=生物学的年齢)を推定する技術(エピジェネティッククロック)が商業的に発達・応用されています。日本でも美容の分野で自費の検査として導入されています。利益につながるので多くの会社が機械やシステムを開発していますが、NIPTの結果が企業によって若干の優劣があるように、使っている技術やデータによってある程度の違いがあるのではないでしょうか。
最近の研究によると、妊娠はエピジェネティックな老化を加速させる可能性が示唆されているようです。これまでは主に高齢の非妊娠集団が対象でしたが、今回、スタンフォード大学から未経産の妊婦と非妊娠女性を比較した研究が報告されました。
妊婦においては妊娠10週~14週と分娩後1日目、非妊婦においては登録時と7カ月後の採血検体において、Illumina EPIC2アレイを使って11種類のエピジェネティッククロックを測定しています。このうち6種類(Hanmum, PhenoAge, GrimAge, GrimAge2, Stem Cell Division, DunedinPACE)において、個人内でエピジェネティック年齢の有意な加速が認められました。妊娠群において200日あたりのエピジェネティック年齢の加速は1.58年~5.28年という結果でした。GrimAge2クロックによるエピジェネティック年齢は、暦年齢とは異なり、妊娠合併症と関連していたころから、有害な妊娠転帰を反映するマーカーとなる可能性が示唆されたとのことです。
