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新生児のミルクアレルギーの話題

[2026.05.30]

2026年4月の日産婦医会報に、昭和医科大学小児科の今井 考成先生がアレルギー発症機構ついて解説されているのが載っていましたので紹介します。
アトピー性皮膚炎から食物アレルギー、そして気管支喘息へと進行する「アレルギーマーチ」の阻止に最も重要なのは、新生児期から乳児期の管理です。以前は原因食物の除去でアレルギーの発症予防することが主流でしたが、現在は「皮膚バリアの保護」と「適切な時期の積極的な経口摂取」による免疫寛容の誘導が常識になっています。
ミルクアレルギーには大きく分けて即時型(IgE依存性)と非IgE依存性のものがありますが、今回の解説のメインは研究が進んでいるIgE依存性のミルクアレルギーについてでした。即時型は牛乳タンパク質に対する特異的なIgE抗体が原因となるもので、感作(IgE抗体の産生)には一定期間の食物との接触(抗原暴露)が必要です。そのため、出生直後の新生児期に初発することは稀ですが、出生後のわずかな時期に経皮感作が成立して、生後数週間で発症することもあります。
湿疹などでバリア機能が破綻した皮膚から抗原が侵入すると、免疫細胞はそれを「遺物」と認識してIgE抗体を作り出すようになります。これが「経皮感作」ですが、逆に、口から腸管を通って入ってくると制御性T細胞が誘導され、その物質を栄養素として受け入れる「経口免疫寛容」が成立します。つまり、アレルギーの発症は、経口摂取による免疫寛容が成立する前に、荒れた皮膚からの感作が先行してしまうことが原因となります。したがって、アレルギー発症の予防は「皮膚バリアを守り、経皮感作を防ぐ」ことと、「腸管から早期かつ適切に抗原を入れる」ことの2点になります。
皮膚バリアを守るためには、出生直後から「洗いすぎない・こすらない」ように気をつけ、積極的に保湿ケアを心がけるが重要です。なにせ、新生児の皮膚は成人の半分の厚さしかなく、容易に乾燥してバリア機能が低下しますので。実際に、新生児期から保湿剤を塗布することでアトピー性皮膚炎の発症リスクが低下することが分かっています。
経口免疫寛容を誘導するための方法には注意が必要です。2つの重要な報告があり、1つ目は2020年の臨床研究で、生後1か月から10mlのミルクを「毎日継続」して摂取させたグループでは牛乳アレルギーが有意に抑制されたことから、早期から継続的に抗原に曝露されていると免疫寛容が誘導されやすいことを示唆されます。2つ目は2019年のJAMA Pediatricsに掲載された論文で、「生後直後3日間」に母乳にミルク5mlを追加した群と、母乳にアミノ酸乳を追加した群で比較したところ、1歳の時点で前者に有意にミルクアレルギーを発症したとのことです。一見矛盾する結果ですが、これはミルクの摂取が中断(退院で完全母乳に移行)されると免疫寛容が維持されないままとなり、この期間に皮膚から抗原が曝露されることによって感作されてしまったと考えられています。
現時点では確実にミルクアレルギーの発症を予防する方法は確立されていませんが、上記のエビデンスから、「出産後に母乳が十分に出ない場合、とりあえずミルクを足し、母乳がでるようになったらミルク完全にやめる」のではなく、一度ミルクを開始したのであれば、完全にゼロにするのではなく、少量でもよいので毎日あるいは週に数回継続して摂取させることが免疫寛容の維持につながる可能性があります。
食物アレルギーやアトピー性皮膚炎から始まり、年齢を経るに従って気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症などへと進行することをアレルギーマーチといいますが、アトピー性皮膚炎は単なる皮膚疾患ではなく、全身のアレルギー疾患の「入り口」と考えられるようになっています。皮膚で感作が成立すると、全身の免疫系がアレルギー体質に移行して、その状態で食物アレルギーを発症するとさらに炎症サイクルが増幅され、喘息などの発症リスクが高まると言われています。
新生児期・乳児期早期の皮膚感作と食物アレルギーの発症を食い止めることは、アレルギーマーチを阻止することにつながります。そのためには出生直後からのスキンケアとエビデンスに基づいた授乳指導(①不要な除去の回避、②継続摂取)で、新生児の肌を守り、腸を育むことが重要です。

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