梅毒感染妊婦の治療
2025年8月の日産婦医会報に、日本大学教授の川名敬先生の総説「梅毒感染妊婦に対する治療法に関する提言」が載っていましたので紹介します。
梅毒の流行は40~50年周期だそうで、2013年から世界的な流行期に入っているとのこと。日本での感染者数は2023年、2024年とも年間14000人台と横ばいで、女性感染者は10~20代が多く、全体の3/4を占めています。性産業従事歴のある割合は非妊婦では50%ですが、妊婦では20%に満たないものの、従事歴がない女性にまで蔓延していることになります。
2013年以降に妊婦の梅毒患者も増加し始め、全数調査が始まった2019年は200人強、2023年は383人です。感染は大都市だけではなく、地方都市にシフトしているので注意が必要です。先天梅毒児も増加し始め、2012年までは年間10名以下だったのが、2023年は37名になっています(2024年の最終データはまだ公表されていないそうです)。
治療には内服のアモキシシリンか、ペニシリン筋注製剤が基本です。治療開始24時間以内に頭痛、筋肉痛、発熱があったり、治療の8日目頃からはしばしば薬疹が出ますが、これは急激に菌が死滅することで強い免疫反応がおこることが原因で、ペニシリンアレルギーではありません。なお、妊婦に対してWHOやCDCが推奨している唯一の治療方法は筋注です。これは初期梅毒で97.1%、後期梅毒で100%の母子感染が予防されたという報告に基づいています。日本では2021年11月から保険収載されましたが、それまでは内服治療が行われていました。内服治療による母子感染の予防効果のデータがなかったため、WHOと厚生労働省、日本産科婦人科学会が共同で全国調査を行ったところ、出産60日以前から十分な治療をされていた母体57例において母子感染率は14%でした。その後に調査された先天梅毒児18例では、10例が妊娠20週以前に治療を開始されており、妊娠初期スクリーニング検査で梅毒と診断され適切な内服治療が行われていたにも関わらず、母子感染が予防しきれていなかったことから、やはり筋注が推奨されるとのことでした。
