骨盤内うっ血症候群について
2025年12月号の日産婦医会報に、放射線科の我那覇文清先生の総説「骨盤うっ血症候群について」が載っていました。日本では認知度が低く、診断されずに放置されていることも少なくないとのこと。私も学生時代や研修医の時には聞いたことがありません。骨盤(内)うっ血症候群(Pelvic Congestion Syndrome: PCS)とは、子宮・卵巣・腸管などの骨盤内の臓器から流出してくる静脈がうっ滞することにより、半年以上持続する骨盤内(下腹部)の痛みがある状態です。多くは閉経前の経産婦に生じ、長時間の歩行や立位で症状が増悪して、仰臥位になると症状が軽快することが多いようです。月経時や性行為でも症状が増悪することがあり、子宮内膜症による症状と似ています。左側が痛くなることが多いのが特徴です。下肢静脈瘤や陰部静脈瘤が併存することがあり、とくに下肢静脈瘤は典型的な下腿内側ではなく大腿の背面にみられるようです。
原因は、分娩時のいきみで長時間腹圧がかかるからなのか、骨盤内の静脈において、逆流しないように備わっている弁が機能しなくなり、骨盤内の静脈がうっ滞することと考えられています。とくに多産婦に多いとされています。卵巣静脈は左右対称ではなく、左は腎静脈に還流しますので、より太い大静脈に還流する右よりも抵抗が大きくなり怒張しやすく、弁不全になりやすいのでしょう。だから左側に症状が多くなるようです。静脈拡張により血管の内膜が過伸展して、炎症や疼痛を引き起こすサイトカインの活性化が生じると考えられています。また、閉経後に症状が軽減したり、ホルモン補充療法が奏功したりすることから、女性ホルモンの関与も示唆されています。
診断基準は確立されておらず、最終的な診断は静脈造影が必要です。近隣施設を検察してみるとオクノクリニック(OKUNO CLINIC)さんが得意のようです。
