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女性ホルモンとしてのテストステロン

[2022.02.28]

男性ホルモンとして知られているテストステロンは、卵巣で作られてその場で女性ホルモンに変換されます。また、副腎や脂肪組織や筋肉でも前駆体(男性ホルモン)から女性ホルモンが作られることからも、男性特有のものではありません。さらに、体中のすべての組織で活性があり、特に脳と生殖器での影響が大きいことが分かっています。性的欲求の低下、うつ症状や疲労感、記憶力の低下などに関係していることから、テストステロンは女性にも必要なホルモンであり、女性ホルモンの一種ととらえてもよいでしょう。
血液の中でテストステロンはほとんど性ホルモン結合タンパク(SHBG)に結合しており、このSHBGと結合していないわずか1~3%がフリーの状態で存在して、これが様々な組織の中で作用しています。通常、女性の血中テストステロン値は男性の1/10 〜 1/20 と報告されていますが、低値であるため検査の感度は十分ではなく、検査室によって異なる可能性もあり、ホルモン値の基準値には幅があります。また、循環血液中のテストステロンだけではなく、各組織で前駆体から合成されるホルモンも作用を持つため、採血でホルモン値が低くても症状がない場合もあり、ホルモンレベルの低下と実際の症状の間の相関も明らかではないことが知られています。このことから、国際女性性機能学会(ISSWSH)のガイドラインでは、女性におけるテストステロンレベルの検査は、①高い活性がないことの確認と、②治療のモニタリングのためだけ、に用いるべきであるとのことです。
現在日本で認可されているテストステロン療法はありませんが、海外で女性用量の経皮的投与を行った4年間の臨床試験データでは、重篤な有害事象の増加はなかったようです。また、別の第III相試験も実施されており、乳がんと心臓病の増加も認められませんでした(Ob/Gy 2021;138:809-812)。
ひげが生えたり、声が低くなったりする副作用もあるため、現段階では勝手な使用はするべきではありませんが、将来は対象を絞って適応になると思われます。

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