ピル・緊急避妊
ピルについて
もともと日本では経口避妊薬(OC)のことを「ピル(低用量ピル)」と呼んでいましたが、近年、月経困難症や子宮内膜症などにも効果があることが分かってきたため、成分や量が調整されたさまざまなお薬(低用量エストロゲン-プロゲスチン:LEP)が開発され、どちらもピルと呼ばれるようになりました。避妊効果はOCの方が高いです。
OCは女性が妊娠をコントロールするために服用する避妊薬です。40%程度の女性が使用経験があるヨーロッパの国があるのに対して、日本での普及率は数%にとどまり、性感染症を予防する知識とともに教育機関や医療従事者などからの情報提供がおざなりになっている印象です。きちんと服用することで非常に高い確率で避妊をすることができます。また、服用をやめることで元の月経に戻り、妊娠をすることができます。
当院ではガイドラインに従い、始めの3か月は1シートずつの処方になります。同様に、問診により血栓症のリスクをお持ちの方への処方はお断りしております。当院では1年以内に子宮頸がん検診を受けていない場合、血栓症リスク評価のための血液検査をされたことがない場合には検査をお勧めしています。その後は定期的に子宮頸がん検診、血液検査(肝機能評価など)、経腟超音波検査で、副作用の有無などの確認をしております。健診でのデータをお持ちの場合は御持参下さい。
副作用について
ピルは、個人差がありますが、副作用がでることがあります
- 不正出血
- むくみ
- 偏頭痛
- 吐き気
- 嘔吐
- 性欲の減退
- いらいらする
- 血栓症(出産前後のほうが10~40倍もリスクがあるという報告もあり、頻度が高いわけではありませんが、注意が必要です)
など
避妊以外の効用について
ピルは妊娠のコントロール以外にも下記の効用があるとされています。
- 生理痛の軽減
- 生理周期の安定
- 子宮内膜症の予防
- 子宮体がん、卵巣がんのリスク軽減
また、上記のほかにも、にきびの治療などの美容的な効用があるともいわれています。
上記のような効用については、医師の指導のもと、適切な処方が求められますので、必ずご相談のうえ、服用していただくようお願いいたします。
緊急避妊について
緊急避妊とは、排卵を5~7日間抑制させる薬を内服したり、精子の運動を直接阻害もしくは着床を阻害する銅付加避妊具を挿入したりすることです。すでに着床(妊娠)している場合には効果がありませんので、100%妊娠が回避されるわけではありません。
現在日本で製造されている内服薬の場合は無防備な性交渉から72時間以内 (3日以内)に1錠のみます。妊娠阻止率は24時間以内であれば95%ですが、1日経過するごとに85%、58%と減少してしまいますので、早めの服用が大切です。とはいえ、72時間以降もすぐに効果が無くなるわけではなく、120時間までなら63%の妊娠を阻止するという報告もあります。
また、最近海外で流通している第3世代の緊急避妊薬は、性交渉から5日以内に内服することによって妊娠を阻止します。卵胞を発育させるホルモンや妊娠を継続させようとするホルモンの分泌を抑えることで、排卵が抑制されて妊娠しにくい状態になります。さらに、子宮内膜を変化させて、受精卵ができても着床を阻害するため、更に妊娠しにくくなります。排卵時期に性交渉があった場合(すでに排卵を抑制できない時期)や、性交渉から3日以上(5日まで)経過されている場合にお勧め致します。
避妊具の場合は5日以内に挿入すると99%の妊娠が阻止されますが(脱出しなければ効果は5年間持続)、診断されていない不正出血がある方や子宮内に感染が疑われる方などは使用できません。また、出産経験のない方には挿入が困難な場合があります。