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一般不妊外来

 「不妊」とは、1年以上夫婦生活を夫婦生活を営んでいても妊娠に至らない場合のことで、カップルの約10%の方が該当します。ただ、体外受精を含めた治療を行った後、自然妊娠することもあります。「不妊症」という言葉は、「頭痛」という症状が風邪・髄膜炎・偏頭痛・くも膜下出血などが原因であるように、便宜的に使用している状態を示す病名ですので、まずはその原因を明らかにすることが大切です。
 WHOによる原因調査によると、原因が男女共にある割合が24%、女性側にある場合41%、男性側にある場合が24%、原因不明が11%です。女性の不妊原因の多くが卵管因子で、その他に内分泌・排卵因子、子宮因子などに原因があると言われています。男性が原因による不妊の多くが造精障害ですが、若いころからの不適切なマスターベーションにより、腟内で射精できないことが原因の場合もあります。

基本的な診察や検査は以下の通りです。

1. 問診
 過去の病気、けが、手術、月経歴とその状態、妊娠歴、服用している薬について伺います。避妊期間、不妊期間、不妊治療の既往のある人には、どのような治療を受けていたかを問診票に記載して頂きます。

2. クスコ診・内診
 子宮頚管ポリープ、腟形成異常などはないかを観察します。また、内診で子宮の稼働性や圧痛の有無を確認することがあります。子宮後方(ダグラス窩)の圧痛は子宮内膜症を疑います。

3. 基礎体温
 朝、目覚めて起き上がる前に口腔内で測る体温です。教科書的には、2週間位の低温相とそれに続く2週間位の高温相がありますが、実際にはきれいなグラフにならないことが多いです。最終低温日が排卵に近く、最も妊娠しやすい日とされています。高温相が無く、一相性の場合は無排卵と考えられ、高温相が9日以内と短い場合は、黄体機能不全の可能性があります。

4. 経腟超音波検査 
 卵胞の発育、子宮内膜の厚さ、卵巣全体の状態などをモニターに映し出す検査です。月経期には5mm程度の卵胞が、排卵期には18~20mm程になります。子宮体部の内膜は排卵期には8mm以上になってきます。排卵前と比較することにより、実際に排卵が起こったかどうかモニターすることが出来ます。基礎体温が二相性であっても排卵せずに卵胞が黄体化することがあり、これを黄体化未破裂卵胞(LUF)といいます。そのため、月経期間に観察することもあります。
 卵巣に多数の中小卵胞が見られる多嚢胞性卵巣(PCO)、チョコレート嚢胞、卵巣腫瘍なども診断出来ます。

5. 頸管粘液検査
 頸管から分泌される粘液は、排卵数日前から除々に増量し、粘性が増して透明になります。含まれている成分のため、乾燥させて顕微鏡でみるとシダの葉様の模様が見られます。このような粘液が十分にある場合、精子が泳いで上がりやすいのです。エストロゲンの分泌が少ない場合や、子宮頸管の円錐切除術などをしているときなどは分泌量が少なくなっています。

6. 精液検査
 2~7日間の禁欲期間をおいて、マスターベーションで精液を容器にとります。コンドームには殺精剤が使われていることがあるので使用しないで下さい。

7. Huhnerテスト
 排卵日頃に性交し、頸管粘液中の精子数を調べます。運動精子が少ない場合は、妊娠の可能性が低くなると言われています。

8. 子宮卵管造影
 低温期に子宮頸管の入口から造影剤を注入して、子宮内腔の形や卵管の通過性を見るものです。また卵管周囲に癒着があるかどうかも判ります。通水法や通気法では卵管の通過性はある程度わかりますが、子宮腔や卵管腔の形はわかりません。

9. 採血によるホルモン検査
 排卵する機能はあるか、排卵した後に黄体が充分働いているのか、着床の邪魔をするようなホルモン因子はないか、などの検査になります。
  (a) LH(黄体化ホルモン)
 FSHと共に下垂体から分泌され卵巣を刺激して卵胞を発育させるホルモンです。排卵の直前にピークを作り、これをLHサージといいます。排卵チェックは尿中のLHが多くなっていることを確認するものです。下垂体前葉に異常のある場合、低い値が続きます。多嚢胞性卵巣など、卵巣の機能に異常がある場合は高値となります。
  (b) FSH(卵胞刺激ホルモン)
 卵胞発育を促す下垂体ホルモンです。排卵の前に高値となり、頸管粘液の分泌を促します。加齢によって卵巣の働きが落ちてくるとこのホルモンが上昇します。
  (c) PRL(プロラクチン)(乳腺刺激ホルモン)
 産後ではないのにPRLが上昇する異常を高プロラクチン血症といいます。乳汁が出たり、黄体の働きを悪くして高温期が短くなったりして着床に悪影響を及ぼします。下垂体に腺腫ができていたり、薬の副作用で上昇する事があります。
  (d) エストロゲン(卵胞ホルモン)
 卵胞(卵子が入っている袋)周囲の細胞集団から分泌される女性ホルモンです。排卵が近づくと高値となり、頸管粘液の分泌やLHサージを促します。排卵が発育しないと低値のままです。
  (e) プロゲステロン(黄体ホルモン)
 排卵した後の卵胞(黄体)から分泌されるホルモンで、体温中枢に作用して基礎体温を上昇させます。子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態に変化させます。低値の場合は黄体機能不全となります。
  (f) テストステロン(男性ホルモン)
多嚢胞性卵巣があったり、副腎皮質に異常がある場合に高値になって排卵障害を来たす場合があります。
  (g) 甲状腺ホルモン
 甲状腺機能の亢進や低下は女性に多い病気です。月経不順として現われることがあります。甲状腺ホルモンの量は正常範囲でも、甲状腺ホルモンを分泌させるTSHというホルモンが高値の場合は潜在性甲状腺機能低下症といい、低値に保つことで妊娠率が向上することから甲状腺ホルモンを内服することがあります。
  (h) 抗ミュラー管ホルモン(AMH)
 卵細胞(卵子)を包んでいる卵胞が分泌するホルモンです。AMHを測ることで卵巣年齢(卵巣予機能:残っている卵子のだいたいの数)が推定できるとされています。高値であれば予備能は十分あると言えますが、低値であっても個人差が大きく、必ずしも妊娠を望めないわけではありません。とはいえ、低値の場合は早めに治療法をステップアップした方が良いかもしれません。

10. クラミジアに関する検査
 クラミジアは性感染症の一種で、若い人を中心に罹患率が上昇しています。クラミジアが子宮頸管に感染するとおりものが増え、放置すると卵管から腹腔内に感染が及び、下腹痛を来します。その際、卵管が閉塞したり、卵管周囲に癒着が起こったりして不妊症の原因となります。感染しても自覚症状がない場合も多いのでやっかいです。従って無症状でも検査する必要があります。
  (a) 採血による血液中の抗体検査
 IgA(+)、IgG(+)→クラミジアが存在する。
 IgA(-)、IgG(+)→以前かかったことがある。
 IgA(-)、IgG(-)→クラミジア感染はない。
  (b) 子宮頸管内分泌物の培養検査(抗原検査)
 陽性ならばクラミジアが頸管内に存在するので治療が必要です。抗原が陰性でもIgG抗体が陽性で下腹痛がある場合は感染が否定できないので治療の対象となります。パートナーと一緒に抗生物質を服用します。

<精密検査>
 上記の検査を行っても15~25%程度は不妊原因が特定できません。さらに検査をする場合は、採血で抗精子抗体を調べたり、子宮鏡で子宮の内腔を観察したり、腹腔鏡で子宮や卵巣周囲の癒着を観察して洗浄することも行いますが、それでも原因が分からない場合もあります。

<臨床研究>
 子宮内の環境(子宮内フローラ:細菌叢)が悪い場合の生児獲得率が6.7%、正常の場合は58.8%という報告がありますが、症例数が十分ではないこともあり、現在、東京大学などを含めてデータの蓄積をしているところです。治療により妊娠率の向上が望めるため、原因不明不妊の場合、検査(自費)をお勧めいたします。

上記の検査の結果に応じて治療を開始します。まずはタイミング療法から開始して、排卵誘発や人工授精のステップに進みます。

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