更年期からの女性の不眠
2024年4月に、厚生労働省が「睡眠科」を診療科名に追加する方針を発表しました。「睡眠科」の単独ではなく、「睡眠内科」や「睡眠精神科」など、組み合わせで標榜できる方式を想定しているようです。経済協力開発機構(OECD)の調査(21年版)では、日本人の1日あたりの平均睡眠時間は7時間22分で、33か国中で最も短くなっています。厚労省の調査では、睡眠で十分な休養が取れていない人の割合は2018年に21.7%に上っています。慢性的な睡眠不足は高血圧や糖尿病、うつ病などのリスクを高める恐れがあります。
東京大学国際高等研究所の木村昌由美先生のレポート(OG SCOPE vol.14,2024)によると、不眠症の有病率は、思春期以降どの年代をとっても男性よりも女性のほうが高いようです。様々なホルモンが睡眠や生体リズムに関係することが知られており、女性の場合は更年期を境に睡眠の質低下を自覚する傾向が高まります。卵巣機能が低下すると、ゴナドトロピン分泌の抑制が効かず、中枢神経の睡眠調節機構に影響すると考えられています。動物実験でも、女性ホルモンには生体リズムを調節する作用があることがわかっています。
前述のように思春期以降のどの年代でも女性のほうが不眠の訴えが多いのですが、実際に脳波を測定してみると、睡眠の質のマーカーが女性のほうが高いという、予想とは逆の結果になっているようです。なぜ女性のほうがより良い睡眠を必要としているのかという答えは見つかっていないようですが、Sleep Lossに対する脆弱性が女性のほうが明らかに高いといえます。女性のほうが夜間(20時~翌朝7時)にストレスホルモンが多く分泌されている(女性のほうがストレスを強く感じている)ことや、うつ病などの気分障害も女性のほうが罹患率が高いことも、関係があるようです。