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乳がん術後の萎縮性腟炎に対する治療

[2023.11.30]

2014年に海外で提唱されたGSMという概念は、腟とその周辺の慢性的な炎症や萎縮した状態と、それに伴う腟や尿道の刺激による症状のことです。日本では、2019年に日本産科婦人科学会がGSM(Genitourinary Syndrome of Menopause)の正式な和訳として、「閉経関連泌尿生殖器症候群」としました。萎縮性腟炎がこれに含まれます。
閉経すると女性ホルモンが減少しますが、乳がんの治療や、子宮筋腫および子宮内膜症に対する偽閉経療法でも同じような状態になります。乳がん手術後の治療をうけた閉経後の女性のうち、70%以上がGSMを経験するようですが、乳がん患者さんへの女性ホルモンの全身投与は禁忌です。全身投与ではなく局所(腟内)投与ならどうか?とういう疑問について、今回、萎縮性腟炎の治療の一つである経腟エストロゲン療法と、乳がん再発率との関連を調べた研究(ObGy.2023:142:660-668)がありましたので紹介します。
2009年1月から2022年6月までのアメリカの大規模なデータベースから、GSMと診断される前の5年以内に乳がんと診断された42113人の女性が抽出されました。エストロゲン受容体陽性の乳がんだった10584人の3.9%に経腟エストロゲン製剤が投与され、再発リスクは、エストロゲン受容体の有無にかかわらず有意差はありませんでした。つまり、乳がん術後の方の局所療法は再発リスクを高めるわけではない、ということになります。

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