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授乳回数が多いほど乳がんが少なくなる理由

[2023.08.29]

今回は2023年7月のNatureにオンライン掲載された論文のプレスリリースを紹介します。
<乳がん発生の進化の歴史を解明―ゲノム解析による発がんメカニズムの探索―>

がんは1個の異常に増殖する変異を持った細胞から始まり、その子孫からなる集団と考えられています。これまで、最初の変異がいつ起こり、がんが発症していくのかよく分かっていませんでしたが、今回日本の研究チームによって、乳がん発症の全経過(思春期前後生じた最初の変異の獲得から数十年後の発症にいたるまで)が初めて明らかにされました。
全ての乳腺細胞には閉経にいたるまでに毎年約20個の変異が蓄積すること、また、閉経後には、蓄積速度が約1/3に低下すること、さらに、一回の妊娠出産で約50個変異が減少するとのことが報告されています。また、妊娠出産後には、それまで休眠状態にあった細胞から新たに乳腺組織が再構築される可能性が示唆されました。つまり、授乳が終了した時に遺伝子変異の多い細胞が急速に消失して、新しい乳腺が構築されることが、授乳回数が多い女性で乳がんが少なくなる理由と考えられています。
さらに、(1)乳がん全体の約20%を占める特徴的な乳がんの起源は、思春期前後に変異した単一の細胞に由来すること、(2)この細胞は分裂増殖を繰り返し、数十年後に乳がんを発症するころまでには、乳腺内の広い領域にわたって拡大すること、(3)こうした拡大の過程を通じて、30歳前後までには、その後乳がんを発症することになる複数の起源の細胞が生じ、これらの細胞から多中心性に発がんが生じたと推定しています。

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