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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の新しい診断基準

[2023.12.31]

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は性成熟期の女性の5~15%程度と言われていますが、2024年12月に日本産科婦人科学会からPCOSの新しい診断基準が公表されました。PCOSの表現型には人種差があるため、欧米の診断基準が当てはまらない場合があります。たとえば、今回の調査では日本人での多毛は13.5%だったのに対して欧米では7割もあり、BMI30以上の肥満は欧米で49%であるのに対して日本では10.3%でした。これまで1993年と2007年に作成された診断基準が使われていましたが、今回2020年4月から2022年3月に診断された895例の採血結果などの科学的根拠に基づいて改定されています。以下の3つの項目全てを満たすものがPCOSです。

①月経周期異常(無月経、稀発月経、無排卵周期症)
②多嚢胞卵巣またはAMH高値
③アンドロゲン過剰症(採血によるアンドロゲン高値または男性型多毛)またはLH高値
(肥満例では下垂体からのゴナドトロピン分泌能が低くなるので、LHを用いずにLH/FSH比で判定)
なお、LHのパルス状の分泌パターンと血中半減期の短さに加え内因性性ステロイドホルモンによる影響を受けやすいことから、1回の検査でLH高値を検出できるとは限りません。

今回の改定は、1.アンドロゲン過剰症に多毛を採用、2.思春期条項を新設、3.LH高値の注記を現行測定系に更新、4.卵巣所見の判定にAMHを採用、の4点が特徴です。初経後8年間はPCOSの診断はしませんが、将来の子宮体癌の予防や肥満の介入のために、リスク評価をする意義があります。中等度から高度の不安やうつ傾向にも注意が必要です。なお、思春期に月経周期が整であっても成長とともに不整になることがあるので注意が必要です。

子宮体癌は子宮内膜がエストロゲンに長期間暴露されることが関係していると考えられていますが、PCOSでは慢性的な排卵障害のために同様の状況になることから、子宮体癌の発症率が2.7倍に増加します。そのため、周期的に黄体ホルモンを投与して子宮内膜を保護する治療が必要です。LEP/OCは子宮内膜保護に加えてニキビや多毛の改善にも有効です。また、肥満例においては将来的な糖尿病、脂質異常症、高血圧症などの生活少雨看病を予防するために早期からの減量指導や薬物療法が重要でしょう。

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